超音波骨折治療研究会

代表世話人挨拶

超音波骨折治療研究会代表世話人

占部 憲

低出力超音波パルス(Low-intensity pulsed ultrasound: LIPUS)はこれまで20年以上にわたり世界で骨折治癒の補助療法として使用されてきました。米国食品医薬品局(US Food Drug Administration)や英国国立医療技術評価機構(UK National Institute for Health and Care Excellence)はX線学的研究に基づき、LIPUSを骨折の治療法として承認しています。本邦でも1997年から医療用具として承認を受けています。

ところで超音波は初めから骨折治癒に有効であると考えられていたのでしょうか。1950年代には1000mW/cm2以上の超音波は骨折治癒過程を遷延させるという報告が相次ぎ、超音波は骨折治癒に有害であると考えられていました。しかし1983年にDuarteらがウサギの骨切りモデルに対する低出力超音波の基礎研究と難治性骨折患者28人に対する臨床研究を報告し、低出力超音波の有効性を示しました。その後1994年にHechmanらが脛骨新鮮骨折に対する無作為二重盲検臨床研究を、1997年にKristiansenらが橈骨遠位端骨折に対する無作為二重盲検臨床研究を報告し、LIPUSの効果が確認されました。

それではLIPUSは骨折治癒にどのような効果を示すのでしょうか。長管骨の骨折治癒過程には 1.血腫形成、炎症性細胞浸潤、2.膜性骨化、3.軟性仮骨形成と軟骨形成、4.軟骨内骨化、5.硬性仮骨による架橋、6.リモデリング、という細胞現象があります。様々な基礎研究からLIPUSはこれらの細胞現象の細胞増殖よりも細胞分化に効果があることが示されています。

さて本研究会は本邦でのLIPUSの多施設臨床試験を行うためのclosedの会として1998年に始まりました。第2回を水野耕作先生(当時神戸大学整形外科教室教授)がopenの会として開催され、その後もLIPUSの基礎研究、臨床研究を発表、討議する会として継続発展しています。特に基礎研究に関しては、この研究会からたくさんの情報を世界に発信しています。

高齢化などの社会背景から、整形外科領域ではより早期の骨折治癒治療が期待されています。LIPUSは骨折治癒過程を促進させる有効な手段の一つです。LIPUSを適切に使用する事、またLIPUSとほかの手段を有効に併用することで骨折治癒をより促進させていくことが可能であると思います。そのためには今後も様々な臨床研究、基礎研究が必要です。この研究会はそれらの研究を発表していただく場として、ますます発展させていきたいと思います。皆様のご指導ご鞭撻の程どうぞよろしくお願いいたします。

平成29年5月吉日